「会社のビジョンは大変素晴らしいが、もう疲れた…」
「息子に毎日勉強を続けさせるにはどうしたらいいの?」
会社の崇高なミッションには賛同するが、成果報酬の評価に疲弊し、モチベーションが続かず、メンタルが壊れてしまう。とお悩みの方 あらゆる教育本にある方法を試しているが、子供のやる気が長続きしない。とお悩みのお母さま方
この記事は、そんな方に向けて書いております。
目次 ・感情こそ人間の大いなる武器 ・ウイズコロナで-職場環境はますます変化 ・チームの成功に重要な管理職の資質とは? ・AI時代に求められるソーシャルスキル ・社会的な「帰属意識」が「やり抜く力」を向上させる ・合理的で論理的な認知スキルによる「やり抜く力」モデルの限界 ・“感謝”“思いやり”“誇り”という「感情」が成功の鍵 ・まとめ:Raychell’s suggestion
感情こそ人間の大いなる武器
社会スキルや感情スキルの性質や重要性について、時代や環境の変化を敏感に感じ取りアップデートしていくことが必要です。 AI時代に成果を高め、学問、職業、経済、健康など、人生のあらゆる分野における成功、希望や夢の実現のために取り入れることができる「やり抜く」スキルとは?
ウイズコロナで、職場環境はますます変化
Web会議やチャットツール、書類の電子化、AI…職場環境はますます変化を遂げているなかで、成功に必要なスキルだけでなく、人との付き合い方も急速に変化している。その結果、成功とリーダーシップの基礎となるのスキル ―すなわち、共感、協力、想像力、コミュニケーションに関する技術の重要性が増している。
技術的な専門知識や繰り返しの作業だけを要求される仕事は、AIといったテクノロジーの進歩で自動化が可能になるため、経済的価値が低下しつつある。機械はどんな人間よりも、より長い時間、速く、正確に、非常に複雑な繰り返しのタスクをこなすことができる。しかし、機械には限界がある。それは、共感や道徳心を持たないことだ。機械はだれかが怒ったりしていても、それを察することはできない。こうした能力は人間の心の領域に属するものであり、それはこれから数十年にわたって変わることはないだろう。
現在、仕事において人間が優位に立てるのは、同僚やクライアントとの関係を築き、維持する能力である。思いやり、感謝、公平さを広げていく力が必要とされる。
他の人に共感することができて、親しみがあり、自ら信念を持っている同僚、指導者、管理職は、本人だけでなくチームにおいても最高の能力を引き出せる。そしてこうした資質を持つメンバーが増えることで、みんなのストレスが減り、幸福度は高くなり、結果として収益が増える。
感謝、思いやり、誇りの感情が社会のネットワーク全体に相互に響き合うかたちで浸透していくとき、みんなの貢献度も上がっていく。
チームの成功に重要な管理職の資質とは?
Googleが2009年に実施した研究を見てみよう。Googleの人事部は、巨大検索エンジンの焦点を内部に向け、自社の管理職とチームの成績に関する情報を収集、分析した。人事考課、受賞歴、意見調書など、社員に関して使われあらゆる種類の言葉や表現を収集し、それらが生産性や業績の尺度とどの程度関連しているかを調べた。
チームの成功にとって、もっとも重要な管理職の資質とは、以下の結果となった。
調査前
- 「技術的な専門知識」 グーグルの社員の多くが予測
調査後
- 「支援と思いやりの態度」1対1で面会の時間や、同僚との問題を解決する手助け
- 「成果主義」
「技術的な専門知識」は、プロジェクトチームが重要であると確認した8つの要素の中で最下位だった。技術的なノウハウを身に着けた優れた管理職は、確かに利益を生み出すが、協力や共感が伴わない場合、結局は非建設的で生産性の劣る環境を作り出し、そういったリーダーが率いるチームは仕事面でも心理面でも損額をこうむっていたのです。
この調査結果を受けて、マイクロソフトも、企業文化の創造や社員の採用の際に、共感や情の厚さといった性質を重視するようになった。
AI時代に求められるソーシャルスキル
目先の利益追求が、イノベーションを減少させるといった問題が明らかになっている。創造力には探求をする自由と失敗をする自由が必要であり、今という時間に意識を集中すると、ほぼすべての領域で未来の可能性が制限されてしまう。
成功を勝ち取るために重要な技術について、人と協力したり、公平でいたり、他人の立場で考えたり、我慢したりする方法に重点が置かれている。
現在の職場の人間関係においては、幼稚園生活のそれにますます似てきている。より多くのチャンスを「提供する仕事や職場では、巧みな社会的、感情的スキルが必要とされる。一人で課題を解決したり目標を達成したりすることではなく、順応性のある小さなグループの中で実力を発揮し、協力して問題にあたり、互いに信頼しあい、人間関係における優先順位や懸念に気を配ることができなくてはならない。つまり、そうした場所での成功に必要なのは、「対人関係」のスキルなのだ。
社会的な「帰属意識」が「やり抜く力」を向上させる
スタンフォード大学のある心理学実験がある。学生に解けない数学パズルを「個人でやる」と「グループでやる」と先に告げられる。全員が同じ部屋で実施し、学生がどれくらいの時間取り組むかを記録する。「グループでやる」と告げられた学生は、自分の作業はグループの成果になり、ほかのメンバーから評価され、頼りにされることになると信じていた。結果は、グループの一員だと信じていた学生の方が、長い時間取り組み、1週間を過ぎても高いモチベーションを維持し、もっと楽しいことをやる選択肢を与えられても、パズルに取り組む方を選択した。グループ内で自分が貢献可能で、評価される目標を持つことは、人を懸命に努力させ、目の前の快楽にも抵抗できるようにする。つまり、帰属意識はなんの苦労もともなわずに「やり抜く力」を与えてくれる。
マサチューセッツ大学の心理学者によるこんな検証結果もある。STEM(科学、技術、工学、数学)の分野における男女間の格差を例にとるとSTEMの分野で学士号を取得した女性の数は男性の半分である。女性のやる気をそぐ要素の一つは、帰属意識の薄さなのではないかと考えた。新入生女子150人を相手に、150人のエンジニア男女に協力してもらい1年間指導者を務めてもらった。結果は、女性の指導者に担当してもらった学生は、男性の指導者の場合よりも、工学専攻の中退者率が低くなる傾向があった。さらに、学生が学業で成功する可能性を高める最大の要因の一つは、自分の指導者と一緒に働くことで生まれた帰属意識の向上にあった。
難しい仕事に直面した際のやる気と忍耐を向上させるのは、「帰属意識」と他の人による温かい支援だということが分かってきた。
合理的で論理的な認知スキルによる「やり抜く力」モデルの限界
「認知」・・・合理的かつ論理的でひとを導く役割を果たすと思われている心のメカニズム
「感情」・・・不合理で、気まぐれな要素とみなされ、招いてもいないのに姿を現すように思えるもの
何世紀にもわたって、人間は感情を非難して、認知を称賛する傾向にあった。しかし、認知スキルを使用する「やり抜く力」には副作用があり、危険と隣り合わせのアプローチだと警笛を鳴らしている。多大な努力とリスクが重なることで緊張を感じ、一時的な燃え尽き症候群を起こしかねない。このマイナスの影響は健康を損なう恐れもある。さらに、こうしたストレスは学習能力まで妨げてしまう。実行機能を使っていかなる犠牲を払っても集中力と忍耐力を維持するやり方では、心の柔軟性を失う恐れがある。やり抜く力の強い人間は、タスクを完遂しようとして、誤った戦略に固執する確率が高いことも示されている。
「感謝」「思いやり」「誇り」という感情が成功の鍵
私たちは転換点に近づきつつある。
心理学用語でいえば、感情には「適応性」があり、目標の邪魔をするのではなく、達成に役立つ決断を、時にはさりげなく、時には強引に導いてくれる。この本質的な事実を見失って、誤った選択をしてしまっている。誘惑に負けないようにするため、頻繁に意思の力や実行機能を使っていると、その効果は徐々に薄れていき、誘惑に立ち向かうことが困難になる。
人に怒ったり、言葉で攻撃したりする一部の感情によって、すべての感情を悪と思い込むのは間違いである。「感謝(gratitude)」、「思いやり(compassion)」、「誇り(pride)」という感情は、社会生活をうまく機能させるための鍵となる。私たちに自制心を与えてくれ、短期的な報酬や富を犠牲にしても、社会的な成功を促し、未来を尊重する方向に働く、これら3つの感情は、学問、職業、経済、健康など、人生のあらゆる分野における成功、希望や夢の実現のために取り入れることができる。理性や意思の力だけを頼りにするよりも、この3つの感情を養う方が、より効果的で、苦労の少ない形で追及できる。
Raychell’s suggestion
これまで私たちは「自制心」という認知スキルを称賛し、成功にはこの認知スキルを向上させる多大な努力とリスクに対するストレスに打ち勝つ強靭な精神力を養うことが重要と考えてきました。しかし、燃え尽き症候群(バーンアウトシンドローム)という恐ろしい副作用があるということに気が付きはじめ、新たな「やり抜く力」の研究が行われています。そこからの気づきが、「感謝(gratitude)」、「思いやり(compassion)」、「誇り(pride)」という感情を、人として豊かに育んでいくことが、私たちの成功への近道だということです。テクノロジーの進化によって、AIと人間がより対比され、人としてのありかたの部分に焦点が当てられるようになり、いわば、私たち人類は機械のような効率を追求することへの価値への疑問と限界に気がついたのです。これからのAI時代において、人としての品格ともいうべき3つの❝感情❞こそが、私たちの社会に力を与えてくれる大いなる武器になるようです。
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もっと詳しくSTUDYしたい方はこちら(参考文献)
- なぜ「やる気」は長続きしないのか デイヴィッド・デステノ 著 住友進 訳 白揚社